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P.モーツァルト・オーナーの富士山・山中湖 “自然観察日記”
山中湖は、4月の20日に15pも雪が積もりました。こちらに来て初めての体験です。しかしのそのおかげで、この時期には珍しい、新雪の富士の輝きを毎日見ることができました。人の目が見る事のできる、最も純粋無垢な輝きです。昨日、今年初めての雪解け水が、富士の肌を流れ落ちました。富士の春の知らせです。これからそれは日ごとに勢いを増し、10日過ぎには、落差1000mの世界一の
“ 幻の滝” が出現します。夜明けの赤富士を山中湖から見ると、真紅に染まる富士のど真ん中をほとばしる雪解け水が白金に輝き、昇竜が天に帰っていくように見えます。アア、その背にまたがり共に帰りたくなるでしょう。
ここ山中湖も、この冬はなんだか、ずうっと早春の気配でした。
昨冬は、22年ぶりに湖が全面凍結しましたが、この冬は雪もほとんど降らず、おかげで雪かきの苦労もなく助かりましたが、富士と共に雪や氷が見せてく
れる様々な美しいものを見る事もかなわず、心なしか淋しい冬でした。
でも、朝ごとに赤富士の見える大きな窓には、一面のゆきはなの羊歯状六花が咲き、その見事な花園に目を奪われました。
この精緻なレースの向うには、霧氷の森が朝陽に無数の煌めきを放ち、虹色の光りの森と化しています。
朝、それを見つけた時は、いつもシマッタ!と思います。
人が夢の中に憩う間に、それは種から芽を出し、測ったように正確に、六方にその美しい枝を伸ばしていきます。
このミクロコスモスのひめやかな営みの一部始終を、息を殺して見つめていたい。
静けさが深めながら為されるこの秘め事を見つめるうちに、いつかはその巧みの主に出会える気がするのです。
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