山川紘矢、亜希子ご夫妻のこと
お二人とのおつき合いはいつからでしょう。もうずいぶんとなりました。 初めての時から今まで、お二人とお会いしているときの質感は変わりません。 世界の精神世界系の名著の翻訳のほとんどを手がけられるという、すごいお仕事をされながら、私が「先生」とお呼びするといつも恥ずかしがられていました。 決して変わらず温かく、そのぬくもりだけが心に残ります。 お二人の謙虚さと誠実さと優しさは長い年月、私の心にもうこんなに降り積もりました。
お二人にお越しいただきます折々、私は富士の人知れぬ場に数知れずご案内いた しました。 一度などは、台風のような雨の中を、雨具をかぶり足にまでビニールを巻き、富士の樹海を歩き続けたのです。いったい、誰がそんなことをつき合うでしょう。 しかし、私たちの労をねぎらい、富士は私たちを自ら秘めたる森へといざなってくれたのです。 それは実に見事な森でした。どこのものでもない、天空に浮いた『宇宙の森』とでも呼びたいような、時が緑に化身した不思議の森だったのです。
山川ご夫妻は「天使が・・、精霊が・・」とよく口にされます。 こと知らぬ私には分かりかねますが、この時ばかりはその大いなる羽の下に、こ とが成就したことを感ぜざるを得なかったのです。 その後も、春の森で、夏の森で、秋の森で、ことは起こりました。
何でもない日常の経験を、あたかも天使や精霊の汚れなき羽衣を借りてすくい取 る、それはマジカルで、秘儀の域に属する体験の仕方ですが、確かに命に息吹き を与えるのです。 私たちの命の喜びを持って、天使、精霊の導きという、そのことの中に何の汚れがあるでしょうか。
そんなことを私に教えてくださったのが、お二人でした。
オーナー 西岡範男
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