谷口 佳至英 / 声楽家とは書きにくい、歌の人

モーツァルトの(西岡さんの?)秘蔵っ子、歌姫と言われるが、もちろん専属なんておこがましい。しかし、この方が歌う『アヴェ・マリア』は聞くたびごとに、確かに「鬼の目にも涙」。何々清浄器であれば最強、空中のバイ菌もこれには参るだろう。そしていつも思っていました、「こんなに若くして、この方はどこからこんな高い愛の形を作ったんだろう」と。朝日と共に歌い、一本の立ちつくす木と共に、野の花や、水や風や光りとも手を結び、語らう前にまず一献、声高らかにともに歌わないか、命が微笑みの中で頷いてる、夜には星と眼を交わし、夢の中にも歌のさざ波は広がっていく。いいなあ、この人の一日は!これじゃ、病気なんかどこかへ行っちゃいますね。アルツハイマー病のご老人達とも、一本一本切れていく糸を歌の手作業で一緒に繋いでいく。一度お聞きになってみてください。私たちの命が、こんなに温かく、清らかで、深いものの中に抱かれるなら本望って、きっと思ってしまわれることでしょう。