松尾 秀麻呂 / 彫刻家 P.モーツァルトのホールに入ると、どなたも一瞬不思議で、 怪しげな場所に来たと思われるらしい。「教会みたいなとこですね。」と云われる方が結構多い。それは駐車場から始まる。まず、建物が、緑に隠れて見えない、重い荷物を持って長い階段に苦労させられる、と、見たこともない常識はずれの大きいドアが待っている、玄関は上を仰げとばかり天井が高い、そしてボンッとばかりにホールに入れられると、真っ 正面に教会のシンボルの鐘楼か、はたまたパイプオルガンのようなオブジェが立って仕上げとなる。ウン、考え込んでしまいますね、オーナーとしては。しかし、私はこのオブジェをこよなく愛している。これがなければ、「P.モーツァルト」ではない。いわばこの空間の守護神で、その精神を守り続けた。二〇年、長い間本当にご苦労様! 作者、松尾さんは始めてホールに入ったとき「ここには何かなければならない」と言ってこのオブジェを創ってくださった。国宝級の仏像の修復家として磨かれた感性の一端が、このオブジェにも込められている。芸術的直感がいかにすごいか、この年月がたってみるとしみじみと分る。 朝霧高原の自由な大気を富士と共に吸って、大人(たいじん)の風格で、朗らかに暮らしていた。あなたの大きさには、あまりにもこの世は小さすぎましたか。 |